障害を持つ方が「就労移行支援サービス」を利用するには、各市区町村が発行する「障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)」が必要です。この受給者証は、障害者手帳とは異なり、障害福祉サービスの利用を許可するためのものです。すでに障害者手帳を持っている場合でも、受給者証を事前に取得しなければなりません。本記事では、受給者証の概要や申請手続き、取得後の流れをわかりやすく解説します。
受給者証とは?どのような役割があるのか?
「障害福祉サービス受給者証」、通称「受給者証」は、障害福祉サービスを利用する際に必要な証明書です。この受給者証には、被保険者番号、氏名、住所、生年月日、保険者名、障害程度区分が記載されているほか、サービス利用時の自己負担限度額や期間、サービスごとの給付時間と回数、さらには事業所の登録状況や契約時間などの詳細が記載されています。
就労移行支援サービスなどを利用する場合、事業者と利用契約を締結し、この受給者証を提示してサービスを受けます。利用後に料金の支払いが必要な場合は、利用者が自己負担額を事業者に支払う形になります。
就労移行支援サービスの利用対象者
受給者証を申請する前提として、就労移行支援サービスを利用するには以下の要件を満たす必要があります。
1)就労を希望する65歳未満の人
2)身体障害、知的障害、精神障害、難病のある人
3)就労に必要な知識及や技術の習得、就労先の紹介などの支援により一般的の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人、またはあん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許またはきゅう師免許を取得して就労を希望する人
受給者証の申請手続きと取得までの流れ
受給者証を取得するには、以下の手順を踏む必要があります。
1. 福祉窓口での相談
市区町村の障害福祉課や福祉窓口にて、利用希望者本人または代理人が申請を行います。
事前に必要書類を確認し、スムーズな手続きを目指しましょう。
2. 申請書類の提出
「訓練等給付費支給申請書」を記入し、福祉窓口に提出します。
以下の情報が必要です
- 氏名、住所、生年月日
- 障害者手帳番号
- 病名、申請するサービスの種類
その他、診断書や収入証明書が求められる場合がありますので、福祉窓口への相談をおこなう際に確認しておきましょう。
3. 認定調査
福祉窓口の職員が、申請者の生活状況や障害の程度についてヒアリングや調査を行います。
認定調査の実施する場所は基本的には申請書類を提出した役所か通所を希望する就労移行支援事業所にておこなられますが、実施が困難な場合は自宅で実施するケースもございます。
4. サービス等利用計画の作成
認定調査が終了した後、「サービス等利用計画」の作成と提出が行われます。この計画は、「指定特定相談支援事業者」に所属する相談支援専門員が、申請者の生活状況や心身の状態、ニーズ、さらには今後の目標について丁寧に聞き取りを行い、作成します。作成された計画案の内容は、利用者本人に対して詳細に説明され、内容を確認した上で署名と捺印を行います。
指定特定相談支援事業者とは、自治体によって指定された相談支援事業所を指します。この事業者は、障害福祉サービスを利用するために必要なサービス等利用計画を作成する役割を担っています。また、作成された計画が適切に機能しているかをモニタリングし、必要に応じて見直しや修正を行うことで、利用者がより適切なサービスを受けられるよう支援します。
5. 受給者証の暫定支給
計画案提出後、自治体が暫定の受給者証を発行します。この暫定受給者証は2か月間有効です。
この間にサービスの適合性が確認されます。
6. 支給決定と正式交付
サービス内容が適切と判断された後、正式な受給者証が交付されます。
受給者証申請時に必要な持ち物
就労移行支援サービスを利用するために、受給者証を申請する際には一般的に以下のものが必要となります。
・印鑑(認印)
・申請者の氏名や居住地が確認できるもの
・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等の障害者手帳
・自立支援医療受給者証(精神疾患を理由として通院している方に交付される証書)
・障害や病名が確認できる医師の診断書(主治医の意見書)
また、これ以外にも収入がわかる書類等の提出を求められることもあります。
申請する市区町村や申請者の状況によっても異なるため、事前に各自治体の受付窓口に確認するようにすると申請がスムーズです。
受給者証取得後の流れとポイント
受給者証を取得したら、利用希望の事業所と契約を結びます。
契約に必要な書類は事業所ごとに異なるため、事前に確認しましょう。
受給者証に記載されている利用期間内であればサービスを利用できますが、状況に変更が生じた場合には、窓口での相談が必要です。
就労移行支援サービスの利用料金について
サービス利用料金は、世帯の前年収入に応じて以下のように区分されます:
- 生活保護受給世帯:自己負担なし
- 非課税世帯:自己負担なし
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円 未満):負担上限は月9,300円
※入所施設利用者、グループホーム利用者を除きます - 一定以上の所得がある世帯:上限は月37,200円
利用者の経済状況に応じた設定がされています。
見学や相談でスムーズな準備を!
利用を検討している事業所がある場合、事前に見学や相談を行うのがおすすめです。
多くの事業所が、受給者証の申請方法や手続きについてのサポートも提供しています。
実際の支援内容や事業所の雰囲気を確認しておくことで、安心してサービスを利用できます。
まとめ
就労移行支援サービスを利用するには、受給者証の取得が必須です。手続きは複雑に思えますが、福祉窓口や事業所のサポートを受けることでスムーズに進められます。
適切な支援を受けて、新たなキャリアに向けた第一歩を踏み出しましょう!