まちの玄関口、京都駅。
いろいろな人が行き来してバラエティ豊かな景色。
ざっと駅を歩くだけでいろいろな人が行き交っています。
大きなキャリーバッグをひっぱっている外国の家族連れ、
立ち止まってスマホで場所を確認している旅行中のカップル。
ショッピングを楽しんだばっかりのおしゃれな女の子たち、
切花を袋からのぞかせた涼しげなお着物の女性。
時計を気にするサラリーマンやOLさんたち、
そしてあとは特に名付けられないような、
特に目にも留まることのない大多数の雑踏———ふつうのひとびと。

さてさて。
京都駅から出て今日もワークサポートセンターへ向かいましょう。
いつものとおり、わたしは地下のレストラン街を通り抜けて、地上へ。
ちょっぴりダサい京都タワーは背中の方向へ向けて、てくてく西へと歩きます。
7月の太陽はすっかり凶暴。日傘をひらいて紫外線へは臨戦態勢。
おひるごはんはどうしようかな、今日はだれがなにしてるのかな、
歩きながらいろいろと考えているうちにスクランブル交差点の信号が変わって、
人々は一斉にそろって四方から流れ出て交差していきます。
まだまだいろいろな人たちがたくさん交錯している中をすり抜けて、
少し細い路地へ抜けると、一歩先は駅前なのに、ふつうのひと、の暮らしが広がっています。
京都らしい小ぶりな軒先が連なっている中、わたしは真っ先に日陰へ避難。
どの家々も小綺麗に植木鉢で飾られているのを見るのは楽しみのひとつで、
少し前まではあじさいのむらさきがしっとり華やいでいたけれど、
もう今年はあじさいはさようなら。そろそろひまわりのお出ましかな。
そうして10分ほど歩けばセンターのあるビルに到着です。
警備員さんと笑顔で挨拶を済ましてエレベーターで上階へ。
さあ今日も1日センターでの作業のはじまりです。
がちゃん。
ドアをあけると、おはよーございまーーす!と支援員さんたちが笑顔で出迎えてくださいます。

街の風景に埋もれてしまう、なんてことのないひとのうちの一人、わたしの半日のスタートです。
でもこれを書いている「ふつうにみえる」わたしは働きに来ているわけではありません。
ここはワークサポートセンター。世間で言えば、就労支援、というものです。
わたしは現在ここでパソコンのスキルアップと就労に向けた生活の訓練をしています。
ふつうにみえるわたしは、ふつうの暮らしが少しむずかしくって、紆余曲折の末にここにたどり着きました。
つまり、あなたのとなりのふつうのひとも、ほんとうはふつうができなくて困っているのかもしれない。

そもそも、ふつう、ってなんなのでしょう。
絶対的な基準でも、相対的な評価でもない、「ふつう」とは。
あなたのふつうは、なんでしょうか?
なにができたらふつうでしょうか?
あなたのふつうは、目の前のだれかのふつうでしょうか?
あなたが帰路の電車で隣り合わせになったふつうのひとは、
そう見えるだけでふつうを必死に繕ってるのかもしれない。
見えるものと見えないものが同じぐらい絡みあって世界や社会ができていて、
見えないものはたくさんあるけれど、すれちがう人たちの見えない部分にふと想像をめぐらすこと。
ふつうにみえてふつうがむずかしい生活をして、はや十数年になってしまいました。
しんどいことも本当に多いけれど、
普段気づくのに難しいことに気づかされることも多いのです。

センターでは通所している方も支援員さんも、
持っておられる個々の「ふつう」がそれぞれ違った色できらきら輝いて、
その上で通所されてる方はそれを活かすことを身につけていく。
ここではそうしたのびのびと居心地よく過ごせる空間が存在しています。

ふつうというのはほんとうは、
個人においての調子の「平常さ」の度合い、それは英語で言うとusual、
きっとそういう意味が正しくって、
なのにそれを大他者への価値観に当てはめながらもその基準を誰も知らない枠をつくってしまうと、
枠だけ成長しておかしいことになるのだろうな、なーんて、そんなことを考えています。

帰り道、京都駅。
また雑踏の中を歩いていきます。
旅行者、会社員、主婦、研究者、無職、観光者、病人、学生、職人、僧侶、
老人、若者、男性、女性、あなた、わたし。
あなたもわたしもいつかのどこかのふつうのひと。

***

通所している人の目線で文章を書いてみませんかと言われて、
ワークサポートセンターでの日常や四季や、
そして思っていることを少しずつ、文章にしていってみようと思って
一番に思い立ったのがこの「ふつう」というあいまいで普遍な価値観のことでした。
めんどくさい人間なので、あたまのなかはいつも「???」でいっぱいです。

今後すこしずつ、そうした「ふつうってなんだろう?」ですとか、
日頃わきたつギモンを考えつつ、
ここでの活動やみずからの感じた・考えたことをつづっていければいいなと思います。

ご意見・ご感想、お待ちしております。
みなさんの今日が素敵な1日でありますように。